虫がいた。乗り継ぎで電車を待っている時。ゴミ虫ってやつか?足元にいてぴくりとも動かない。
死んでんのかなーとじーっと見ていると、突然もぞもぞ動き出した。狭い場所が居心地いいのか、ぼくの靴の下にもぐりこみやがる。靴を動かしてやると、動かしたところまでもぞもぞもぞもぞ。また動かしてみるともぞもぞもぞもぞ。もう一回動かしてやると、離し過ぎたのか今度は反対の靴へ。なかなかおもしろい。
ある時、靴じゃないところでぴたっと止まった。どうやらそこはぼくの影があるところだった。こいつは狭いところというより、暗いところが好きみたい。でも、やっぱり影よりも靴の下がよいらしく、すぐに靴の下までやって来た。
そんなこんなでしばらく遊んでいると、突然動かなくなった。靴を移動してもそのまま。明るい場所でもじーっと。こっちもじーっと見ていたが、あんまり動かないので少しほうっておいた。そしたら、いつの間にかにいなくなって、気付いた時には靴の下に。
電車が来るまで10分程でヒマだったので観察していたが、暗いところを探して動き回って、疲れたらしばらく休んで、また暗いところを探し出すというのを繰り返しているようだ。でも、どうして暗いところを探し回っているのだろうか。ちょっと考えてみた。
天敵に狙われないから?そっちの方が涼しそう?おいしいものがいっぱいありそう?
そんなことを考えている時、ちょっと離れたところに、もう一匹のゴミ虫がもぞもぞ歩いているのを見た。いつも気にしていなかったが、探せばいっぱいいるのかも。てことは、やつらは待ち合わせをしているのかもな。そう考えると、妙に納得してしまった。
暗いところで待ち合わせ。人間が勝手にそう見てるだけかも知れないが、今日はそれでよしとしよう。ぼくの近くにいたやつと、ちょっと向こうに、しかし、虫にとっては遠いだろうところに、彼か彼女か存じませんが、そんなところにいたやつとが、いつか会う日が来るのでしょうか。なんて、たまにはいいんじゃない?