ガガガンッ!

終電2本前の電車で帰って来た。金曜で3連休らしいのでものすごく混んでいる。
で、途中の電車を乗り換える時の出来事。結構大きい駅で人の出入りも多い。電車に乗るぼくらは、まずは降りる人らを待つ。電車というのは、中に入れる人数に限りがあるから、特に混雑時はまず先に下りなければ乗れないということは誰にでもわかるだろう。また、出口付近で立っている人が、その駅で下車しない場合でも、一旦電車を降りて降りる人が降りやすいようにすることは、通勤電車でのマナーでもある。その場合、駅で待っている人は、その善意で降りてくれた人が望む時に乗れるような状況を作ることもマナーだとぼくは信じている。
その時はほとんどの人がそのようなマナーを守っていて、平穏無事に乗降作業が終わろうとしていた。して、ぼくがいる位置はドアの真ん前より一つ後ろ。前に一人いる程度の貧民級のポジションである。電車というのは、と言っていいのかわからないが、ぼくの今までの経験では一度開いたドアは次の駅でも開く可能性が高い。この時も次の駅とその次の駅とそのまた次の駅でこのドアが開く。ぼくの中ではこのポジションはかなり悪いとされているところということが伝わったかと思うが、みんなが順番通り行った結果であるのでぼくは大満足であった。
そして、そろそろドアが閉まろうかとしている時に、奥でなにやらガサガサ。なんだろと思って振り返ると、20代か30代の男(私服)が「すみません、すみません」と言いながらぼくの背中をドンッとタックルしてきた。その衝撃でぼくとその前にいた人が電車の外に出される。直後に笛がピーと鳴って、ぼくがより電車に近い位置にいたので先に乗ろう片足をかけたあたりで、なにやらあごにガガガンッ!と何かが当たってくる。
人間ってのは常にバランスをとりながら生きているというが、あごを電車の中の方に突き出されると下にある足を同じ方向に出しにくくなる。そんな状況だし、何が起こっているか理解できていないので乗車が遅れるわけだが、そうするとまたもやガガガンッ!とあごに何かかがヒットしてくる。最終的には、その異物に押し出される形でようやく乗り込み、ぼくの前にいた人も乗り込んだ。
で、ガガガンッ!とあごにヒットしていたものの正体はというと、ぼくの前にいるやつが肩にかけていたテニスラケットの柄の部分だった。丁度肩口からピョコッと飛び出す感じで、乗った後もそいつはそのままその状態。テニス男はそれから方のラケットをどうにかする様子もなく、次の駅で降りて行った。
連鎖反応というかなんというか、もう諦めて次の駅で降りた方がよさそうな状況を無理矢理降りた輩と、そういう状況を察知できなかった車掌、たまたまラケットを持っていて慌ててしまった男、そして、不運にもそこにいてしまったぼく。なんだか情けなくないのに情けなくなってしまったのだった。